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ウクライナ避難民支援と人類社会の未来像(2)-民族共生/ごちゃまぜ型の居場所に係る考察

2.社会福祉法人「佛子園」の取り組み

 ごちゃまぜのまちづくり  2020年から21年にかけて、コロナ禍で海外渡航が不可能になりました。ブータンにも行けないので、わたしたちは、ブータンと係る日本国内の人や組織を探しました。そこで圧倒的に興味を引いたのが、石川県白山市に本部をおく社会福祉法人「佛子園」です。佛子園は2013年以来、ブータン高地貧農支援のため、ブータン産の蕎麦の実を大量に輸入しています。障碍者を含む農家から優先して蕎麦実を買っているそうです。輸入した蕎麦の実は機械製粉・製麺をおこないます。手打ちしないのは障碍者を雇用するためです。そして、ブータン蕎麦を主要なメニューにした居酒屋を福祉系複合施設の中に必ず設けます。これについては、あとでまた述べます。
 佛子園」は、いわゆる特別養護老人ホーム(特養)型施設のアンチテーゼとして台頭してきました。その活動方針は「ごちゃまぜ」です。「ごちゃまぜ」とは、

   障害の有無、性別、年齢、国籍、文化、人種や宗教、性的指向など
   あらゆる人が認め合い、つながること。

です。非常に特殊なことを主張しているようですが、これは現実の社会のあり方に近いものですね。また、「国籍、文化、人種や宗教」という項目に注目するならば、本研究の主題である海外からの避難民の同化や多民族共生社会と重なり合う概念だと考えてよいでしょう。佛子園は、これまで排除・隔離されてきた障碍者や認知症系高齢者を普通の社会に近い状態で健常者と共存してもらいたい、と思っているのです。これを「ごちゃまぜのまちづくり」と呼んでいます

 B`s行善寺  佛子園は石川県内に数か所、福祉系の施設を抱えていますが、まず拠点となる白山市のB`s行善寺を紹介します。ご覧のとおり、ウェルネス(ジム)、保育園、児童発達支援センター、住民自治室、クリニック、カフェ、キッチンスタジオ、温泉、蕎麦処「やぶそば」、製粉・製麺工場などが中庭を囲むように配置されています。B`s行善寺の速水代表の言葉を借りるなら、「過疎社会において一施設一機能の時代は終わった、多機能で人を集める」という方針であり、老若男女が集う多様な施設が同居し、まさに「ごちゃまぜ」の都市的様相を呈しています。いま鳥取県内では、トスクや道の駅が不振に陥り、逆に、ドラッグストアが機能を拡大し勢力をひろげています。過疎地の施設の在り方自体を考え直す時代になっているともいえるでしょう。  
 B`s行善寺の中核がブータン蕎麦の店「行善寺やぶそば」です。ブータン蕎麦を主要な食材にしているので、名目は蕎麦屋ですが、実質は居酒屋に近い。障碍者、高齢者をはじめ老若男女の交流センターになります。温泉に入ったり、ジムで汗を流した後に「やぶそば」で一杯。癌の末期患者さんもこの店にボトルをキープしていたりする。近く往生するのを覚悟している方もここで楽しく酒を呑む。見知らぬ人がどんどん知り合いになっていき、一方が他方を看取って、しばらくすると、看取った側がまた別の人に看取られたりするのだけれど、キープされたサントリーオールドのボトルはなぜか存続しつづける。そんな場所になっているようです。
 じつは、わたしもこの5月に脳梗塞を患い短期入院しました。軽度ではありましたが、後遺症として依然歩行に難があり、疲労しやすい体質になってしまいました。家内も十年以上前に脳の病を患い、障碍者手帳をもっております。いま二人で暮らしていて、なんとか二人で一人前の生活を送ることができていますが、もし一人になったら、わたしは佛子園に行こう、と考え始めています。特養で人生最期の時間を過ごすのではなく、できれば、昼から一杯やりたい。晩年の居場所をみつけたい、と思っています。

 三草二木の助け合い  もうひとつ、小松市にある佛子園の施設「三草二木」での出来事を紹介しておきます。廃寺を再生活用した施設です。重症心身の男性がいたそうです。首の可動域が狭く、理学療法士の処方でも快方に向かわない。そこに、深夜徘徊が多くなってきた認知症のおばあちゃんが加わる。おばあちゃんが男性にゼリーを食べさせようとしたが、男性は首が動かないし、おばあちゃんの手が震えてうまくいかない。ところが、ある時男性のほうから首を傾けてゼリーを食べるようになった。理学療法士が治せなかった首の可動域が広がったのです。一方、おばあちゃんのほうも男性が心配になり、生活リズムを整え始めた。重症心身男性にゼリーを食べさせる「責任」と「役割」が発生したことで、おばあちゃんの深夜徘徊が減った。ホームヘルパーの補助では難しかったことを自ら改善したのです。 これも「居場所」だと思うのですね。特定の人を排除し隔離するから、深夜徘徊したり奇声を発したりするのであって、きちんとした役割や生きがいを与えれば、普通の心性に戻っていくということではないか、と。 


 JOCA南部の開業  青年海外協力協会JOCAは、JICAの青年海外協力隊経験者の帰国後の働き場所として組織化されました。途上国支援で培った経験を生かし、日本の過疎地を拠点として「ごちゃまぜの地域づくり」に取り組んでいます。「ごちゃまぜ」というのですから、佛子園との関係は深く、じつは佛子園の理事長とJOCAの代表を雄谷良成さんが兼務して、二つの組織を統合的に指揮しています。本部は、長野県駒ケ根にあります。
 2016年に内閣府が地域創生事業として「生涯活躍のまち」先行モデル、7市町を選定すると、佛子園とJOCAの連携により、このプロジェクトが全国に広がっていきました。114の地方公共団体がすでに取組を開始しています。JOCAが担当している自治体で、いま最も注目されているのは、じつは鳥取県西伯郡の南部町です。鳥取県民はJOCA南部の取り組みをあまり認知していませんが、本当に注目すべき活動ですので、以下、少し活動を紹介します。
 昨年(2022)6月11日、鳥取県西伯郡南部町法勝寺でJOCA南部が開業しました。法勝寺温泉とブータン蕎麦の店「やぶ勝」を中心として、グループホーム、学童施設、見守り型配食施設、製麺施設などを配しており、まさに圧縮化した佛子園モデルの多機能福祉施設です。蕎麦屋「やぶ勝」では、佛子園と同じく、障碍のある方々が働いています。余談ながら、わたしの個人的感想になりますが、ブータン蕎麦はやや硬めなので、冷ソバより温ソバに向いています。ぜひ食べてみてください。おいしいです。
 JOCA南部は独居高齢者のための見守り型配食もおこなっています。JOCAスタッフと障碍者が協働でJOCA弁当をつくります。1年365日、昼と夜の2回、独居高齢者の家に弁当を配達しつつ見守り活動をしています。グループホームでは、認知症の高齢者が、スタッフの介助を受けながら共同生活をおくっていますが、ハロウィンなどのイベントでは、地域内外の方がグループホームに集まります。

 龍岩寺ごちゃまぜBOX  昨年(2022)11月19日に岩美町で開催したイベント「龍岩寺ごちゃまぜBOX」に、佛子園本部B’s行善寺やJOCA南部の代表者が集まり、佛子園ブータン事務所長もリモートでフォーラムに参加しました。そこで、B’s行善寺の速水代表が述べられたことがとくに印象に残っています。
 まず佛子園の場合、相当な施設投資をしているのですが、その経費的工面はどうしているのか、という点が話題になりました。これについては、なにより70名に及ぶ身障者の常勤雇用により、「就労継続支援A型」の認定を受けていることが大きいとのことです。バイト雇用だけではB型扱いとなり、融資を受けにくいが、A型では積極的な融資を受けることができる。その融資を原資として、経営を工夫し、利益を上げられるようにする。地方自治体からの補助はうけていないと断言されました。これには驚きました。
 次に支援のあり方は一方向的あってはいけない、双方向的であるべきだと何度も強調されました。小松の廃寺施設の事例を思い起こしていただきたいのですが、一方が他方に寄り添うのではなく、双方が寄りあい支えあう構図が理想的だということです。これまでは、支援される側の能力が低いので、能力ある側が全面的に他方を支援するという考え方でしたが、能力が欠けるとされる側も社会や組織に貢献できるという考え方が重要なのだと思います。


9月22日講演パワポ(サス研)joca(2)


《連載情報》ウクライナ避難民支援と人類社会の未来像-民族共生/ごちゃまぜ型の居場所に係る考察
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2682.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2694.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2697.html

《関連サイト》報告書『居場所とマイノリティ』の刊行と関連講演
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2685.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2688.html

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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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