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美山紀行(Ⅳ)

石田家住宅1 石田家住宅2


 2日めの6月17日、重文「石田家住宅」、重伝建「美山北」を訪問しました。

重要文化財「石田家住宅」ー北山型民家の最古例

 石田家住宅は、縁桁に記された墨書から江戸時代初期の慶安三年(1650)の建造と知られており、国内有数の古民家である。教授の地域生活文化論講義でも取り上げられている近畿民家の代表例の一つであり、馴染みがないわけではないが、実際に訪問するのは初めてのことだった。重文指定は1972年。入母屋造妻入。重厚感のある茅葺き屋根は、軒が低く、全体の外見は古代の竪穴式住居を彷彿とさせます。実際、軒下を通るたびに何度も頭をぶつけそうになってしまうほどで、長身の学生が軒下に立ってみたところ、地面との間にスッポリとおさまったことから、軒高はおよそ182cmほどだと分かりました。


石田家住宅 軒下1 石田家住宅 軒下2
かなり軒下が低く、油断すると頭をぶつけそうです...。


 内部の見学もできました。頭をぶつけないよう、頭(こうべ)を垂れて中に入りました。まず釿(ちょうな)で仕上げられた柱が目を引きます。釿は台鉋が発明される前の大工道具で表面の加工や荒削りを行う時に使用されていました。台鉋の発明は18世紀ということなので、墨書の年代とよく対応しています。釿の加工痕跡を残す柱が林立しています。小屋組はオダチ・鳥居組です。サスは併用されていません。やはり17世紀の特徴をよく残しています。アゲニワにも注目しました。「ニワ」といっても「庭」のことではなく、「土間」のことを指しており、床板近くまで土を高く盛った土間をアゲニワと呼びます。このアゲニワに加えて、妻入り、座敷(オモテ)と台所(ダイドコ)が食い違った間取りの特徴を有している民家を「北山型」と呼びます。石田家住宅は北山型民家の中でも最も長い歴史を持っています。


石田家住宅 チョウナ仕上げの柱 石田家住宅 アゲニワ
釿仕上げの柱(左)とアゲニワと呼ばれる高い土間(右)


 重要文化財の実例を見るという貴重な経験をすることができ、とりわけ内部のオーセンティシティにはかなり圧倒されました。その一方で、重要文化財は現代生活に見合う変更が禁じられており、居住者不在の考古学的標本になってしまっているのは、他の多くの重文民家と同様です。


石田家住宅 記念撮影
約1名、しっかりかがまないと顔が写りません


かやぶきの里北村集落 DSCN5579.jpg


重伝建美山北ーかやぶきの里北村集落

 石田家住宅の後は、重伝建「美山北」(通称:かやぶきの里北村集落)を訪問しました。着いてまず驚いたのは駐車場代金500円が必要なこと。3年前から料金制になったようで、観光地化が予想以上に進んでますね。
 北村集落は、平成5年(1993)に重要伝統的建造物群保存地区に選定され、三十棟の茅葺き民家が保全対象になっています。。主屋は江戸~明治期の建築で、保存地区内の約四割が江戸時代に遡る。美山の民家は石田家と同じく北山型入母屋造だが、平入である点が石田家と異なる。上屋の周囲には下屋を巡らし、棟をほぼ東西に揃えています。屋根は雪がずり落ちるほどの急勾配で、積雪対策であるほか、雨漏り防止にもなります。葺き材にはススキと稲藁を併用しているらしいです。
 かやぶきの里には共同の茅場があり、ススキの葉が黄色くなると刈り取り、茅塚を建てます。春になれば乾燥した茅をしまい・・・とススキと共に1年が巡ります。約二十年のサイクルで葺替えを行い、古くなった茅は畑の肥料となります。このような「茅採取」と「茅葺き」の技は2020年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。一方、ススキではなく杉皮葺きの屋根もいくつか見られました。杉を建築部材とした残りの皮を活用したもののようです。

フォトスキャン実習

 滅私先輩以外のゼミメンバーが、フォトスキャンの経験が少ないため、美山北の町並みを対象に機会なのでフォトスキャンの実習をしました。茅葺き屋根の民家が2軒以上並んでいる場所を探し、横に移動しながら何十枚も写真を重ね撮りし、撮った写真を大学のラボに持ち帰ってつなげることで連続立面図を作ることができます。
 撮影は1軒目の端から始め、1枚写真を撮るごとに横へ少しずつ移動していきます。写真と重撮りは60%以上の重複が必要です。写真の枚数はもちろん少ないよりも多い方が良い出来栄えになります。合計で100枚近くになることは普通で、対象物によっては100枚を優に超えます。また、撮影対象物の下から上が一枚の写真に納まらない場合、何枚かに分割して重ね撮りします。一つの家から隣の家までの距離が離れている場合は、その隙間も同じように撮影して、立面図にしたときに正確につながるようにします。


美山 連続立面図
完成した連続立面図です。ラボで写真を取り込んで、3日前後で完成。


古民家カフェのアメニティ

 撮影終了後、茅葺き民家を活用したカフェ彩花でブレイクしました。茅葺き民家の形をしたモナカ生地がソフトクリームの上に添えられていてとても可愛らしい。味も美味しくスプーンが止まらない、一気に食べた私は頭がキーンとなり悶絶しました。シフォンケーキやお団子、大福もメニューにあり、食べてみたかったですが、次回までのおあずけです。


かやぶきの里北村集落 カフェ彩花 かやぶきの里北村集落 カフェ彩花 ソフトクリーム


 美山北はもちろん、すべての重伝建は、先述した石田家住宅などの重要文化財と違って、民家内部の改装は自由となっています。ですから、こうして民家をカフェとして活用することが可能なのですが、アメニティ(快適性)を追求して、内部改装の度が過ぎると、文化財建造物のオーセンティシティや魅力が損なわれてしまいます。美山北の古民家カフェは大きな内装改変をしていません。オーセンティックな空間の中で飲食を楽しむことができますが、畳座敷と土間の段差は高齢者や身障者などにとって楽なものではありません。このように、オーセンティシティ維持とアメニティ向上の間には矛盾があります。この矛盾の解消こそ、古民家再生がクリアすべき大きな課題の一つと思い、自分の卒業研究の主題とした所以です。


かやぶきの里北村集落 カフェ彩花 内部


 北村集落は観光地化しており、観光客が多かったですが、それでも茅葺き屋根の民家と山や畑に囲まれたのどかな雰囲気には懐かしさを感じることができました。店が建ち並ぶ観光地ではなく、人々が実際に生活している観光地だからこそ、そう感じられたのでしょう。また、民家は平面的な配置ではなく、山の等高線にあわせた段状に並んでおり、遠くからでも多数の民家を一望におさめることができます。大変美しい風景でした。(ウェイチァン)


かやぶきの里 記念撮影


《連載情報》 美山紀行
(Ⅰ) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2687.html
(Ⅱ) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2683.html
(Ⅲ) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2695.html
(Ⅳ) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2696.html



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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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