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寧楽徘徊(Ⅰ)

今井町 通り


重伝建「今井町」の町並み保存

 10月24日(火)、通常は午後から卒論ゼミですが、教授が上海から帰国された翌日にあたり、ゼミ生3名が今井町経由で奈良市を訪れました。いちばんの目的は招待状の届いていた元興寺の特展「菅原遺跡と大僧正行基・長岡院」をみることだったが、わたしは自分の卒論に係わる古民家活用と町並み保全をみてまわったので、ここに報告します。
 今井町は、寺内町(寺を中心に浪人や商人が集まり町場を形成した中世集落)で、戦国時代には織田信長と激しく対立していました。今も残されている環濠跡や屈折した通りは、戦国時代に敵の侵入を防ぐ軍事目的で作られたものですが、江戸時代には富裕な商人の財産や生命を守る防御の役割を担っていました。加えて、今井町の民家の大半が江戸時代以来の伝統様式を保持していて、町全体が歴史の重みを感じさせます。教授によれば、この今井町と、同じく奈良県にある五條や、大阪の富田林は日本有数の保存状況を誇る町並みであり、とりわけ今井町は世界遺産レベルだとのことです。
 同町は今から30年前の平成5年(1993)、重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。町内には重要文化財を9軒、県指定文化財を3軒、市指定を5軒含んでいます。短時間での視察だったため、重文の町家を中心にみてまわりました。現場で撮影できた重文町家は、河合家・高木家・旧米谷家・中橋家・豊田家・今西家住宅の6軒でしたが、中橋家は音楽教室として活用されており中に入れず、高木家・豊田家・今西家(見学有料)は少し早く着き過ぎたのか開いていませんでした。内部まで見学できたのは河合家と旧米谷家のみです。


河合家住宅 今井町 河合家住宅 内部2
河合家住宅


重文「河合家住宅」

 河合家住宅は「上品寺屋」の屋号で、江戸時代中期から酒造を始め、現在も営んでいます。家の内部は酒の販売場や、酒造道具の展示場になっています。重要文化財として古き良き風情を感じられますが、ここに人は住んでおらず、今井町内に新居を構えているとのことでした。



 旧米谷家住宅 今井町 旧米谷家住宅 内部1


重文「旧米谷家住宅」

 旧米谷家住宅(↑)は「米忠」という屋号で金物屋を営んでいた。主屋は十分古めかしい。また、内蔵と蔵前座敷があり、蔵は金目のものを入れるため、蔵前座敷は隠居部屋として使われていたそうです。主屋にはボランティアのガイドさんが一人いて、見学者を案内していました。その方によれば、この家も無住で、居住者は新居に引っ越したとのこと。両家とも「考古学的標本」というのは大げさかもしれませんが、展示館のような機能に変わっています。加えて、今井町を去る直前に見た今西家住宅は、この町で最も重要な町家です。1650年の棟札を残します。
 今井町は9軒の重要文化財だけでなく、町並み全体が重要文化財的雰囲気をもっています。内部改装や活用・転用を控え、できるだけ伝統的な姿を保持しようと努めている。こういう町並みは、もちろんあっていい。なにも活用だ、再生だ、方向に向かわないところが今井町のよいところだと思いました。


今西家住宅 (新居込み) 今西家住宅
左の写真:今西家(重要文化財)が右で、その向かい側の建物は新居?
右の写真:今西家住宅(重要文化財)


奈良町 街並み 奈良町 アーケード


奈良町都市景観形成地区

 今井町の視察を終え、北上して奈良町へ。奈良町は重伝建になろうとしてなれなかった。住民の反対が多かったと聞いています。その結果、奈良市の「都市景観形成地区」とちて町並み保全に取り組んでいます。奈良町は元興寺・興福寺の門前町として発展してきたので、そうした世界遺産の大寺を訪れる観光客が移動経路として散策する場所です。当然、観光対策として、町家の改装・活用・再生に熱心に取り組んでいます。同じ奈良県でも、南の重伝建「今井町」は全体が重文的に静態化しているのに対して、都市景観形成地区の「奈良町」は動態的です。今井町は保存に傾斜、奈良町は活用に傾斜していると言った方が分かりやすいでしょうか。過疎の進む地方の重伝建はどちらといえば、奈良町的です。地域振興のブランドとして町並み保全を利用している。奈良町には、カフェ、スイーツ店、雑貨店など多種多様の店が軒を連ねています。観光客はすごく多いです。


奈良町 カフェの通り1 奈良町 カフェの通り2 奈良町 カフェの通り3
最後に歩いた元興寺に近い通りには、古い建物が多く残されていました。


 古民家活用形態を探るため、というか、一休みしたかったので、カフェに入りました。このあたりには平屋や低いツシ2階の町家が多く、教授によれば、年代の古い建物が多いようです。登録有形文化財のプレートもあちこちで見ました。この日、奈良町で見た町並みではいちばん保全度が高いように感じました。選んだカフェは「カフェカナカナ」。内部は古材をよく残している。土間は小さく、畳座敷がひろがっている。このため、椅子席より畳席が多く、私たちも畳席へ。小上げを上がるのも、畳で座/立つという動作もやはり教授は大変そう。民家活用と段差・畳の問題をここでも感じました。


カフェカナカナ 奈良町 カフェカナカナ 内部


 重文的な町並み保存の今井町と、登録文化財的保全活用をしている奈良町。異なる保全状態の町を視察できたことは、卒論の作成にとって有難かった。大学4年生というこの時間を使って、少しでも多くの経験をしていきたい。視察とは全く関係ありませんが、スターバックスの都道府県スタンプを集めている筆者は、奈良県のスタンプをゲットできなかったことに後悔しています...(ウェイチアン)


カフェカナカナ 奈良町
カフェカナカナでの一枚、私は写真を撮られてることに全く気付きませんでした...。

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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