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ノビタのなまず放浪記(1)ー埼玉県吉川

【写真1】吉川市発行のグルメガイド。②~④が面している道路が葛飾吉川松伏線である。 【写真1】吉川市のグルメガイド。②~④の面している道路が葛飾吉川松伏線


 研究室OBのノビタです。この春から故郷鳥取を離れ、千葉に引っ越しました。埼玉がナマズで地域振興しているから是非とも食レポしてほしいと、春から教授に依頼されておりました。5月20日(土)、ちょうど教授が入院中でしたが、なまず料理を食しに埼玉県吉川市へ出かけました。なまず料理はかつてASALABで米子に宿泊した際、駅前の居酒屋「庄や」で食して以来です。「庄や」で提供していたなまずは清流日野川で店主が捕獲した天然物でしたが、現在は代が変わって提供されなくなっていることもあり、再びなまず料理を食せる事は楽しみでありました。


【写真2】「割烹 ますや」外観 【写真2】割烹ますや(吉川市)


なまずをめざして吉川へ

 私の住むアパートから吉川市へは電車で乗り換えせずに35分程と比較的近い。電車に揺られ、その心地よさから吉川駅を乗り過ごし、吉川駅へ降り立ったのは10時35分ころ、その第一印象になまずの要素は全く感じられなかった。吉川市となまずの関係であるが、市のホームページによれば、江戸時代まで遡るという。西側を中川、東を江戸川に挟まれた吉川では、河川交通が発達し、それに伴い川魚料理の文化が根付いたそうだ。かつては「吉川に来て、なまず、うなぎ食わずなかれ」と言われたそうで、新選組の近藤勇をはじめ、元総理大臣福田赴夫、同中曽根康弘らが吉川に来て食したという。河岸付近には料亭が軒を連ねたというが、現在でもなまず料理を食べられる店が中川に近い葛飾吉川松伏線の沿線に集中しているのはその名残りであろう【写真1】。今回は「割烹ますや」【写真2】を訪れた。ここを選んだ理由は、店構えが一見(いちげん)や単身でも入りやすそうだからという至極単純な理由である。


【写真4】 【写真3 】 【写真5】 左から【写真3】料亭の広告、【写真4】市の看板、【写真5】なまずがデザインされたマンホール蓋

 駅から店までは徒歩でも行ける距離であり、ますやまで歩いていくと、電柱に掲げてある料亭の広告【写真3】や市の看板【写真4】、なまずがデザインされたマンホールのふた【写真5】など、各所でなまず料理を推している事を目にすることができた。

割烹ますやのなまず御膳と刺身

 さて、割烹ますやに入りメニューを一覧する。メインはやはりなまず料理であり、一品料理をとっても、なまずの刺身から蒲焼までバリエーションは豊富である。私は財布と相談の結果、なまず御膳と刺身を注文した。膳はなまずの天ぷら、たたき揚げ、南蛮漬け、ごはん、味噌汁、香の物となっており、これで2,100円、刺身は単品で870円(いずれも税込価格)。「少し時間をいただきます」との事であったが、予想より早く料理はテーブルに届いた【写真6・7】。私としてはおよそ20分という非常に長い時間をかけてゆっくり味わいながら刺身と膳を平らげたが、強い興味をもったのは刺身以外の料理だった。
 まず、天ぷらは少し冷めてはいたものの、非常にふっくらとして、咀嚼するとはらはらと口の中でこぼれるほど柔らかかった。海魚のそれでもここまでふっくらとしたものにはなかなか出会えないではないだろうか。自分の中で比較するならば、鱚(キス)よりもふっくらしていたと感じた。


【写真6】 【写真7】
左:なまず御膳【写真6】、右:ナマズ刺身【写真7】(ますや)


【写真8 】  【写真8】たたき揚げ(ますや)


 次に南蛮漬け。南蛮漬けというと身が酢でしめられて硬くなるイメージがある。しかし、なまずの南蛮漬けは、天ぷらや刺身と比べるともちろんその身は硬くなるものの、南蛮漬けの代表例である鯵と比べても、だいぶ柔らかく感じた。酢よりも砂糖の甘味が少し強く感じられ、今回注文した料理の中ではアクセントになり、私には丁度よかった。
 そして、たたき揚げである【写真8】。これは吉川の郷土料理であり、食感や味はつみれに近いが、つみれより少し複雑な味で、なまずの少し硬い骨がアクセントになっている。調理方法については、食した時点で不明だったが、後から図書館の職員に聞いたところ、なまずの一尾を皮も剥がずに頭から尻尾までミンチ状にして揚げるとのことだった。地元の人でも好みが分かれる料理で、その原因は、丸々ミンチにするため、はらわた、特に肝の苦味が料理に出るからだそうだ。複雑と感じたのはそうした調理方法だったからであろう。
 ところで、提供されるなまずは養殖物である。地図で見ると、ちょうど吉川市の中央部になまずの養殖場が確認できる。なまずの養殖は平成8年(1996)に農事組合法人吉川受託協会が成功して以降、年間2万トンのなまずを供給しているという。これにより、寄生虫の心配もなく刺身を、またそれ以外の料理も安定して提供できているのであろう。


【写真9】 【写真9】【写真10】 【写真10】  いずれも創作ナマズ料理のレシピ


なまず料理のバリエーション

 これらが、料理店で食べることができる一般的ななまずのメニューであるが、それ以外にもなまずを利用した料理や食品を見つけた。全てではないが目に留まったものを紹介したい。まずは、平成16年(2004)発行の『吉川市まごこころレシピ』には「なまずのカリカリサラダ」と「なまずの親子のお花見パイ」が紹介されている。いずれも郷土料理として紹介されているが、おそらくこの本が「彩の国まごこころ国体吉川市実行委員会」によって発行されている事を考えると、国体に合わせて考案されたものと推測できる【写真9・10】
 また、今回食する機会はなかったもののグルメガイドによれば、市内ではなまずの巻きずしや春巻、ナゲットなどを提供している店もあるという。


【写真11】 【写真11】  そして、個人的に一番驚いたのなまずのエキスを使用したコーラである。帰りに駅前にあるコンテナを改装したショップ(聞けば観光協会を兼ねているという)で購入したが、なかなかのインパクトであった【写真11】。一体どのような味か、おそるおそる飲んでみたが、特段普通のコーラと大きな違いを見出すことができなかった。若干ながら喉ごしがヌルっとしたのが、もしかすると、そのエキスなのかもしれない。

「吉川=なまず」は比較的新しいイメージか

 さて、吉川市で食したなまず料理について一応まとめておく。刺身と骨のから揚げしか食した事ない私にとって、天ぷらやたたき揚げと邂逅した貴重な日となった。また、それ以外の創作料理も考案されており、アイデアと工夫次第で、様々な料理が生み出せる事も確認できた。海外の鯰料理をヒントにすれば、和洋中以外にも可能性を見出せるのではないかと感じる。
 最後に、個人的な感想を述べたい。今回のなまず料理に関して、ともすれば単なる食レポになりかねず、市立の図書館でも調査をして多少レポートらしくまとめたいという思いがあったのだけれど、書籍から情報を得ることはできず、主にパンフレットを資料とした事は遺憾ではあった。書籍がなくパンフのみという現実からみて、「吉川市=なまず料理」というイメージは比較的新しいものではないだろうか。これは、かつて「吉川に来て、なまず、うなぎ食わずなかれ」と言われていたとある吉川市のホームページを見たときから抱いていた漠然とした疑問だった、つまり、川魚料理の中で何故なまずだけにスポットがあてられ、他の川魚はどうなったのだろうかという点だ。市内の料理店のメニューを概観すると、うなぎも扱っている事が分かり、価格帯でいえば、もちろんなまずよりも上であるし、多くはないが鯉料理も確認できた。つまり、なまず料理”のみ”というわけではない。それでも何故なまず料理なのか。これは根拠のない推測だが、なまずは価格が安く郷土料理として一般家庭に定着していた事と、うなぎと比べて養殖により安定した供給ができた事が関係しているのではないだろうか。
 また、はじめに「第一印象になまずの要素が全く感じられなかった」と述べたが、なまず料理が有名である割に駅を降りてからの情報が非常に少ないのも気になった。コンテナを改装した観光協会を兼ねるショップが一件あるのみであり、事前にインターネットで情報を収集していなければ、あるいはスマートフォンで容易に検索ができなければ、なまず料理を食べられる店を探すのには困難を伴うだろう。帰りの電車内で鳥取県内に似たイメージはあるだろうかと考えた。どこだろうか、唯一思いついたのは鮎の町河原だった。当たらずと雖も遠からずといったところであろうか。
 最後の最後に、出来の悪いOBから教授の一日も早いご回復を祈って、拙文ながらこのレポートを書き上げました。ご笑覧いただき、今後の活力の一端としていただければ幸いです。どうかご自愛ください。(ノビタ、2023年5月21日記)

〈参考文献・サイト〉
1.書籍・冊子
 ①彩の国まごころ国体吉川市実行委員会『吉川市まごころレシピ』(2004)
 ②吉川市商工課『なまずグルメガイド』(2021)
2.ウェブサイト
 ③吉川市「なまずの里 吉川の由縁(ゆえん)(閲覧日:2023-5-20)
https://www.city.yoshikawa.saitama.jp/index.cfm/27,18333,164,831,html
 ④ナマズを囲む LABLOG 2007/02/06(火)
http://asalab.blog11.fc2.com/blog-entry-869.html

《連載情報》ノビタのなまず放浪記
(1)埼玉県吉川 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2715.html
(2)千葉県印旛沼 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2777.html 

《関係サイト》
1.東鯷人ナマズ屋 チラシ予告
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2672.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2674.html
2.東鯷人ナマズ屋 環謝祭
14日(土)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2678.html 
15日(日)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2679.html 
3.P2&P4「古民家カフェと郷土料理のフードスケープ」
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2671.html
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2680.html
4.ナマズ食に係る活動記録-2023年度前期「歴史遺産保全特論」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2700.html

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東日本のナマズは江戸期から

おもしろい紀行文で、次作を期待しています。
考古学・歴史学的にみると、ナマズは中世まではフォッサマグナ以西にしか居なくて、関東に入ったのは江戸時代のようです。最初は外来の怪魚として怖れられていたが、現代のブラックバスのごとくに、味の良い肉食魚であり、徐々に食材になっていった。とくにウナギの代替として重宝されるようになり、ウナギ屋がナマズも捌くようになった。だから、埼玉あたりで創業400年というのは、ウナギ屋の歴史がそうだということです。吉川の場合、ナマズに目をつけて養殖に成功したのが大きかった。鳥取でも秋田でも失敗しています。ナマズはグロテスクな風貌をしているので、食材として忌避される傾向があるけれども、知る人ぞ知るグルメの素材であり、それに気がつけばブレイクする可能性があります。環謝祭の「ナマズの天丼」弁当のように。
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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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