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放送大学面談授業を終えて

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改めて奈良ドキュメント不要論

 12月3日(日)、放送大学面談授業の2日め。さすがに今日は出勤前のドタバタはなく、早めに会場に到着し、準備万端。以下の4コマを実施した。

  第5回 白鳳と天平の甍-飛鳥寺から唐招提寺まで
  第6回 平安密教と山林寺院-宝塔・多宝塔と三仏寺投入堂
  第7回 極楽浄土の伽藍と庭園-平等院と平泉
  第8回 遺跡整備と復元建物-ヴェニス憲章から奈良ドキュメントへ

  飛鳥・白鳳・天平から平安時代までの仏教建築史を3コマ講義し、最後は遺跡整備・復元(再建)・復原(修復)の問題をヨーロッパとの比較から論じた。わたしはベニス憲章(1964)の根幹というべき「材料のオーセンティシティ」の維持を崩壊させた奈良ドキュメント(1994)に批判的な立場をとる研究者の代表格である。文化や遺産が多様であるべきことは尊重するにしても、その表現(修復整備)まで多様でよいとしてしまうと、たとえば日本の場合、復原・復元が許容され、材料のオーセンティシティを大きく減じ、文化財価値を喪失してしまいかねない。そもそも、奈良ドキュメントなどと構えて大仰な新しい原則をつくらなくとも、ベニス憲章前言の最後には「(国際的な)原則を各国がそれぞれの文化と伝統の枠組のなかで正しく適用していく責任をもつことが必要」と記してあるわけだから、その文言に則った対応をすればよいだけのことである。奈良ドキュメントを日本が敢えて提唱した背景は透けて見えすぎている。


1203BRD.jpg 今日もBRD


 多様性を錦の御旗にし、復原・復元を多様性の一部として手放しで許容するのが奈良ドキュメントのやり方であるのに対して、地域的な伝統である解体修理は許容するが、復原・復元はできるだけ控えるようにする、という対応であるならば、材料のオーセンティシティは守られるので、日本という特殊な地域の伝統に則したベニス憲章への適応が可能となる。こうしないと、奈良ドキュメントが前文3項に唱う「1964年のベニス憲章の精神に生まれ、その上に構築され、それを拡大するものである」という前置は完全に無力化してしまう。否、奈良ドキュメントは、1992年に世界遺産条約に加わった日本が、世界文化遺産を増産するために、奈良というホームで「中東の笛」ならぬ「日本の笛」を吹いた結果、日本の障壁となるベニス憲章の本質的部分を排除し、日本に都合のよい解釈ができるようにしたものだと言っていい。世間では、ベニス憲章ではなく、奈良ドキュメントが文化財価値判断の基準になっているが、わたしのように「奈良ドキュメントは不要」と思っている研究者もじつは少なくないであろう。
 この問題と係わって、もちろん平城宮第一次大極殿の復元事業の問題にも触れた。昨日の第4講義では、大極殿本体の話題でとめたが、この日は大極殿院南門脇東西楼の滑稽さを履修者にきっちりお伝えした。首を縦に振って聴いてくださる方が多かったように感じている。


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平等院は無量寿(アミダーユス)の立体浄土変


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日本でもサインを求められた驚き

 第2講義の途中に突然、パワポがスクリーンに映らないというアクシデントが発生した。結果、早めのお昼となり、駅裏のインドカレー屋で所長にベジタブル・カレーを奢っていただいた。ナンと米の両方がついていて美味しかった。いま検索すると、「スパイスカフェ&バル SSS」というお店であることが分かった。今度家内や学生を連れて行こう。
 このアクシデントのため、授業は半時間遅れとなった。もともと合理的配慮が必要なご老人がひとりいたのと、体調の良くない方も含まれていたし、最後の採点・評価があったので、この日の終わりは遅くなった。でも、楽しかった。人前で講義・講演できることのありがたみを最近しみじみ感じている。講義の準備をもっと集中してやらなければいけないな。合理的配慮のご老人からは、まるで寅さんのような付け届けを頂戴したし、広島から遠征して来られた履修者は拙著『建築考古学の実証と復元研究』(同成社)をお買い上げであり、サインを求められた。中国の講演では、これまで何度も『住まいの民族建築学-江南漢族と華南少数民族の住居論』(建築資料研究社)にサインを求められたが、日本ではなかなかないことである。授業の評価がどうだったのかは分からないが、BRDの結果は(体調を崩している方を除いては)良好だった。最後に当方からのお土産?として、上海講演の論文「古民家再生の新基軸」を全員に配付した。もちろん日本語バージョンもつけているので、ご笑覧いただければ嬉しい限りである。
 これで、わたし個人の今年度の講演はお仕舞い。前期3回、後期4回であった。12月14日の「みちくさの駅」送別講演会は挨拶のみです。これからは論文・報告書の執筆と編集に邁進しなければならない。どこかに旅行に行きたいがね


1203講師04
三手先は薬師寺に始まり、平等院で完成する

放送大学アンケート集計_page-0001 放送大学アンケート集計_page-0002 授業アンケート


《関係サイト》
放送大学面談授業「住まいと建築の古代史」
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2718.html
FC2ブログ学校部門 全国1位!
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2728.html
放送大学面談授業を終えて
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2729.html

菅原遺跡報告書批評のための習作
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2706.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2707.html
さよなら、みちくさの駅(1)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2717.html
我在上海
(2)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2691.html

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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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