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雪国の再生古民家巡礼(2)-十日町市竹所

双鶴庵  冬には茅葺き被覆のシートを被せる


カール・ベンクスさんのこと

 カールさんの履歴についてあまり触れていなかったので、改めて紹介させていただく。カールさんは1942年に旧東ドイツの東ベルリンで生まれた。絵画修復師の父の影響を受け、ブルーノ・タウトの著作などから、日本の文化と建築に関心を持ち、1966年に空手を学ぶために日本へ留学。同時に建築デザインも学んだ。日本の木造建築に惹かれ、茶室など日本建築を欧州に移築する仕事に携わるようになる。カールさんが竹所を訪問したのは、友人の米の買いつけに同伴したためであったが、そこで偶然空き家に出会う。中門造の古民家に強く惹かれて購入を決断し、2年かけて再生。夫婦の「終の棲家」にすべく、自邸を「双鶴庵」と命名した(比翼入母屋造の比翼を思わせる名前である)。その後もカールさんは古民家を再生し続け、その総数は東日本各地で60軒を超えるが、竹所では11軒目となる「とちのきハウス」を再生中である。

奇跡の集落-竹所

 今から数十年前の竹所には家が38軒もあったが、カールさん移住時の1993年には、わずか9軒にまで減っていた。平均年齢70歳前後の限界集落であった。しかし、カールさん夫妻と彼の再生古民家に吸い込まれるように、移住者が続々現われ、集落では18年ぶりに子供が生まれるなど、人口は倍増し平均年齢は40歳前後となった。限界集落だった寒村に、次々と老若男女の世代が移住してきていることから、竹所は「奇跡の集落」と呼ばれるようになり、NHKの特集番組(年2回)で一躍有名になった。
 12月8日も快晴で、集落をゆっくり視察できた。道中、カールさんが再生したであろう古民家を何軒も見た。外観はドイツ式ハーフティンバーで、色は青・黄色・ピンクなど様々、黒い古材とのコントラストがよく映える。積雪の銀白とも似合うだろう。私邸と言うことで中には入れなかったが、これまで視聴した動画の記憶によれば、ゲストハウスやカフェと同じように、オーセンティシティ(文化財としての真実性)とアメニティ(現代住宅としての快適性)が両立されている。外観意匠のオーセンティシティは失われているとはいえ、個人的にハーフティンバーは好みのデザインである。この方法で再生すると、工費・売値も茅葺きよりかなり安価で済むという。


ハーフティンバー1 ハーフティンバー2


竹所古民家再生現場 竹所古民家再生現場


「とちのきハウス」の再生現場

 道中、竹所で11軒目となる再生古民家「とちのきハウス」の現場を見ることができた。カールさんの再生手法は日本の解体修理と似ている。いったん民家の骨組を解体して、それを組み直すのだ。その現場を、邪魔にならないように、少し遠目から観察し撮影した。クレーンで材を運び、大工さんが木づちで部材を打ち付ける光景をずっと眺めていた。昨日お話しさせていただいた際に、再生現場では大工さんに一つ一つ指示を出しながら建築工程を進めるとおっしゃっていた。目を凝らしてみると、やはりカールさんが現場にいらっしゃった。険しい表情で大工さんたちの仕事を見ている。カフェでお話した同一の人物と思えないくらい険しい表情だ。仕事に対しての真剣さが伝わってくる。


古民家再生現場のカールさん


カールさんの優しさに感激!

 竹所をまわって、帰りのタクシーを待っていると、軽トラが近づいてきた。私の前で止まり窓が開いた。車中にはカールさんがいらっしゃる。「来ていただきありがとうございました。気をつけて帰ってください!」と笑顔で挨拶された。古民家再生現場で忙しい中、わたしのような若造にわざわざ挨拶に来てくださるなんて、これ以上の感激はありません。改めて感謝申し上げます。じつはこの日、チェックアウトのために「カフェ渋い」を訪れた際、カールさんから蕎麦とうどんを頂戴しており、それだけでも十分感激していた。竹所の方々がカールさんを受け入れたのも納得できる。今後とも竹所と松代の活力が継続的に向上すること、カールさんご夫妻のご健勝とご活躍を祈りつつ、十日町を後にした。(ウェイチアン)


いただいた蕎麦とうどん 
ありがとうございます、いただきます!


《連載情報》雪国の再生古民家をたずねて
(1)十日町市松代 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2753.html
(2)十日町市竹所 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2754.html
(3)智頭町板井原 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2755.html
(4)美作市大原・右手 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2756.html
(5)美作市大原・右手〈学生課題〉 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2757.html

《関係サイト》
買い物に悩むバースデー(大原・右手の学生課題〈2〉含む)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2758.html

北陸に居場所をもとめて
(1)佛子園-ごちゃまぜのまちづくり
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2547.html
(2)輪島カブーレ
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2550.html
(3)カールベンクスさんの古民家再生-松代と竹所
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2551.html
(4)安楽寺三重塔と大法寺三重塔
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2554.html
(5)JOCA本部-駒ヶ根
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2557.html

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オーセンティシティという用語

オーセンティシティ(真実性)という用語の使い方に混乱がみられます。オーセンティシティとは、創建当初から現在に至るまでの歴史の重層性を示すものであり、それは様々な時代の古材が集積された状態を表します。建築に用いられた古材や古い建具はいずれも真実性の一部ですが、新たに導入された和風の家具や創作の囲炉裏などを同一に扱ってはいけないので注意してください。
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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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