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雪国の再生古民家をたずねて(4)-美作市大原・右手

大原街歩き 大原街並み


大原宿の町並み

 12月20日(水)。岡山県美作市の大原と右手(うて)をゼミ忘年会を兼ねて訪問した。先日、教授ご夫妻が右手の久米屋を訪れ、一気に大原・右手との親交が深まってきた。12月に入ってから新潟十日町、智頭町板井原、そして大原・右手と、主に雪国で多くの民家再生例を見ている。卒論に関わると同時に、それらの地域を訪れたことは、私個人にとってもかけがえのない経験になっている。この日、教授はあらかじめ、鳥取側上方往来(因幡街道)の宿場町をみておき、大原を訪れたいと考え、滅私さんに12時半ころ連絡され、早くから大学のロータリーで待機されていたが、学生の足並みが揃わず、ご機嫌斜め。それでも、なんとか昨年までの調査地、河原宿T家の前で往来のスケール感を確認し、大原へ車を走らせた。美作市役所大原総合支所に到着したのは、予定より10分遅れの14時10分ころ。庁舎では、建築家の丸山さんのほか、美作市役所本庁からわざわざ社会教育の文化財係長さんや、企画係長さんがかけつけ、支所長さんも含めて歓待をうけ、両係長さんは、その後の大原宿視察にも同行してくださった。有難い限りである。


1220上方往来河原のスケール感01 1220大原00総合市庁舎01 左:上方往来のスケール感(河原宿) 右:大原総合支所にて


 丸山さんは8年前に東京から中右手集落に移住し、地域おこし協力隊の一員として活動した後、地域から離れるのはよくないと決断し、移住された方である。一級建築士の資格をもっておられ、大原宿でのカフェ、コワーキングスペース兼宿泊施設などの改修にも携わっている。まずは町並みとともに、その改修例を拝見させていただくことになった。

上方往来または因幡街道

 播磨国と因幡国を結ぶ街道は古くから人馬の往来があり、江戸時代は鳥取藩主の参勤交代路となった。鳥取側からは姫路まで続くこの古道を「上方往来」、美作・播磨側からは「因幡街道」と呼ばれる。岡山県町並み保存地区の「古町」には本陣と脇本陣が残っており、歴史的町並みの保全度も高い。古町では過去に四回大きな火災が発生しており、建てこんだ家の造りには火がえし(袖壁)、通し土間、なまこ壁など防火用の配慮がいくつも見られる。これらにより、古い町並みが残った理由の一つでもあるだろう。

 
脇本陣となまこ壁 脇本陣となまこ壁


難波邸

 先に述べた通り、丸山さんの改修した住宅が古町には3軒ある。コワーキングスペース兼宿「難波邸」、あんこのおやつを楽しめる喫茶店「あんこや ぺ」、岡山の食材を中心とした食事とコーヒーなどを楽しめる飲食店「OHAYO」だ。それぞれ案内していただいたが、「OHAYO」だけは休業中で、他の2軒の視察となった。


難波邸外観
↑↓難波邸
難波邸内部1 難波邸内部2 難波邸内部3


 築100年の古民家を改修し、コワーキングスペース兼宿、ジュエリーショップとしても運営している難波邸。玄関先はソファやお洒落なテーブルなどかなり現代木造テイストを感じたが、古風な良さを失っているわけではない。黒光する柱になにより存在感があり、和紙仕立ての照明などインテリアなどから温もりある空間を存分に味わえる。奥の部屋(宿泊スペース)は、見上げると梁組が露出している。そのスペースには、キッチンや椅子・テーブルがあり、真実性と快適性の両立をめざしている。箱階段も発見。カールさんと似たアイデアだが、ホワイトボードで隠れているのが残念だった。また、畳部屋が寝室となっているが、高齢者・身障者は使いにくいかもしれない。そして、寒い。靴を脱いで板のフロアに上がったのだが、足元がかなり冷えてきた。ストーブやエアコンを備えているとはいえ、外部からの冷気が染み込んでくるため暖気が逃げてしまう。カールさんの断熱処理を少し恋しく思った。


1220大原01あんこや01 1220大原01あんこや02


あんこや ぺ

 カールさんがカフェと建築事務所を一つの元旅館に納めているように、丸山さんもこの喫茶店と建築事務所を一体化している。店内写真禁止の表示があったため外観しか撮れなかったが(目の悪い教授は表示に気が付かなかったのか撮影していたが)、内部は古材を多く残す伝統木造の空間だった。先述した「通し土間」が残されていること、黒くなった古材が多いこと、和家具や木製テーブル・椅子などから、古き良き日本の民家を体感できる。だが、アメニティはやや弱いかもしれない。まずは大きな段差だ。玄関先で靴を脱ぐのだが、土間から上がる際の高低差がかなりある。若者は大丈夫でも、高齢者・身障者にはきつそうだ。また、天井が低かった。天井の低さが建築の古さを証明している一方で、何度も頭をぶつけそうになり、というか、ぶつけてしまった。そして、やはり寒い。難波邸同様、ストーブはあるのだが、足元と空気が冷たく感じた。やはりペアガラス、断熱材、床暖房、薪ストーブの効果は絶大だと思う。


久米屋外観


古民家ゲストハウス久米屋と土蔵サウナ

 大原宿の視察を終え半時間ばかりで車に乗って、中右手集落へ。ここでも丸山さんは古民家活用を実践しており、訪れた人に移住を考えてもらうきっかけとしている。この活動を5年間続けており、来年の4月にミツマタ和紙づくりを継承する初めての移住者を迎えるそうだ。初移住者、誠におめでとうございます!
 中右手集落の人口は10年前には50人ほどいたそうだが、今では30人で、そのほとんどが高齢者である。2016年に地域おこし協力隊の一員として移住してきた丸山さんは、人が集まる場所づくりをめざして、2018年に古民家を改修。大正3年の建物を間取りはほぼそのままで活用し、ゲストハウス「久米屋」として営業している。2階の元養蚕室は現在改修中である。また、久米屋には蔵を改修したサウナを付設している。実際に中に入れていただいたが、ヒリヒリとした熱さと言うより、肌触りの良いなめらかなぬくもり。サウナストーンが入っている箱のふたを開けていなかったためそこまで熱くなく、ゆったりと温まることができた。


久米屋隣接のサウナ内部 久米屋隣接のサウナ外観


 サウナを出て、久米屋の主屋へ。年内最後のゼミ活動と言うこともあり、忘年会としてお食事させていただくことになっている。内部は改修時に間取りを変えず、材もほぼそのまま使用していることもあり、日本民家のもつ良さが感じられた。大正の民家そのままである。囲炉裏は新作らしいが、かなり雰囲気が良く、見上げると梁組が露出しており、囲炉裏の煙で燻されたのか黒光が際立つ。ただし、やはり古民家の段差・畳・寒さの問題は残る。土間から上がる際の段差は高く、囲炉裏を取り囲んで床に座るため辛い方は辛い(教授は立ち上がりで倒れそうになった)。石油ストーブ3台で暖を採るが、燃料代も大変だし、CO2の問題もある。学生の吐く息が白い。ほんと学生の分際で生意気言わせていただくと、サウナ用の薪が入手可能なのだから、薪ストーブの導入を視野に納め、その際は薪ストーブの周りをレンガ壁で囲むなどの工夫をするのが良いのではないかと考える。また、窓はやはりペアガラスか雨戸で外気をできる限り遮断したい。それだけで、室内温度がかなり上がるのではないかと感じた。


久米屋での食事写真1 久米屋での食事写真(牡丹鍋) 牡丹鍋の材料


本物の空間で楽しむジビエ

 忘年会で提供してくださったメニューは、おむすび、漬物、アマゴの塩焼き、鹿肉のたたき、牡丹鍋(〆はラーメン)だ。私自身ジビエは久しぶりで、ものによっては臭みがNGな時があるのだが、この日の鹿肉はとても美味しく、ゼミ生全員どんどん口に運んでいた。先述したように、食事をした囲炉裏部屋の雰囲気は大正の古民家そのもの。そんな場所で川魚やおむすび、ジビエなどをいただくというのは中々ない貴重な経験だった。こうして古民家と郷土料理に魅了され、2023年のゼミは幕を閉じた。


久米屋での集合写真


《連載情報》雪国の再生古民家をたずねて
(1)十日町市松代 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2753.html
(2)十日町市竹所 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2754.html
(3)智頭町板井原 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2755.html
(4)美作市大原・右手 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2756.html
(5)美作市大原・右手〈学生課題〉 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2757.html

《関係サイト》
買い物に悩むバースデー(大原・右手の学生課題〈2〉含む)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2758.html
美作の久米屋を訊ねて
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2730.html

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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