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雪国の再生古民家をたずねて(5)-大原・右手〈学生課題〉

1220大原12難波邸02集合01 1220大原12難波邸02集合02 難波邸式台前


 2023年のゼミ忘年会ともなった美作市大原・右手の訪問については、3年生と4年生1名に以下の課題を出しました。
 
問1 大原宿の歴史と町並み保全の概要をまとめ、古民家再生の実例をみた感想を述べなさい。
問2 美作の限界集落「右手(うて)」の古民家再生・活用と移住状況について、新潟のカールベンクスと比較しながら感想を述べなさい。
問3 教師は退職後の「書庫兼アトリエ」となる活動拠点(セカンドハウス)を鳥取周辺の古民家/木造建築の再生により実現できないか、と候補物件を探している。先日送別講演会を開催した「みちくさの駅」もその候補の一つだが、大原宿もよい場所だと考えている。今回の視察で、セカンドハウスの所在地として大原宿や右手をどう感じたか、感想を述べなさい。


 締め切りは12月27日(水)。最初に提出してくれた鶴舞君のレポートを転載します。


因幡街道古町-袖壁と海鼠壁の町並み

 《問1回答》  因幡から播磨までを結ぶ上方往来(因幡街道)は古くから人馬の往来があり、道路や宿駅が整備された。因幡街道沿いの宿場町として栄えた大原は、鳥取藩が参勤交代時に宿泊した三宿場のうちの一つである。美作市古町(大原)はかつて小原宿と呼ばれ、本陣・脇本陣・問屋が置かれた。宿駅は、上小原(古町・川西)と下小原 (辻堂)に分かれていたが、本陣・脇本陣をもつ古町村が宿駅の仕事の中心で あった。また、古町は宮本武蔵生誕の有力候補地でもある。


1220大原10袖壁の町並み02海鼠壁03 1220大原10袖壁の町並み02海鼠壁02武蔵の里02 1220大原10袖壁の町並み04 袖壁と海鼠壁の町並み


 古町を歩いていると、路地や茅葺屋根・袖壁(火がえし)・ナマコ壁などが見られる。袖壁は、時代が新しくなるにつれてその機能よりも意匠に凝るようになった。ステータスシンボルとしての価値が高まったということである。結果、袖壁の細部意匠によって建物の新旧を見分けることができる。 また、海鼠壁は、明治以後の町並みに多く見られる特徴である。古町には本陣と脇本陣が残っている。本陣は江戸時代の宿駅で、公家や幕府要人などの賓客も宿泊したが、第一の利用者は鳥取藩主池田侯であった。一方、脇本陣は大名や幕府の要人が本陣に留まる際、重臣の宿場に充てられた。本陣は数寄屋造りの御殿と御成門が今もなおその姿をとどめる。
 本陣向かいの休憩所には、 脇本陣の庭にあった水琴窟が再現されている。水琴窟とは、大地を器として自然が奏でる装置である。地中に埋められた瓶の中で水滴が壺の底面を打ち、その音が妙音となって聞く人の心をとらえる。このように、古町は歴史的町並みがよく保存されている。古町では、享保18年(1733)~天保7年(1836)の間に四回大火に見舞われており、建て込んだ家の造りには、火がえし・南北の大壁・通し土間など防災に適した構造が有効とされた。それが、現在も古い町並みを残す要因の一つとなった。加えて道路が石畳のエリアは、早くから岡山県の町並み保存地区に選定されており、このことも古い町並みがよく保存された要因である。


1220大原11本陣01 1220大原11本陣02 本陣と周辺の町並み


雰囲気としての温もりと機能的な暖かさのギャップ

 大原宿では現在、古民家を活かし、移り住んだ3組の若者が新たに宿、飲食店などを開業しており、古い町並みと新しいカルチャーが交差している。土佐邸を改修したあんこや「ぺ」は、あんこの卸売りをしている。店内であんこのおやつを食べることも、持ち帰りもできる。また、改修をおこなった丸山さんの設計事務所も内部にある。OHAYOは、地物を使用した食事や飲み物のレストランである。 築100年の古民家を改修した難波邸は、宿、コワーキングスペース、ジュエリーショップを運営している。


1220大原12難波邸01 1220大原12難波邸03 難波邸


 今回、大原宿での古民家再生の実例を見て、そのうち2軒の中に、実際に入らせていただいた。あんこや「ぺ」は、梁と構造体はそのままに内装のみ改修しており、通り土間も残している。中に入ると、椅子に座ってゆっくりと読書などをしていたくなるような、非常に落ち着いた雰囲気を感じた。課題は断熱設備であり、費用の関係でほとんど整備できなかったと聞いた。
 難波邸は、梁組が見える内装となっている。「ぺ」と同様に古民家の温もりを感じるが、キッチンや冷蔵庫などの家電、コワーキングスペースのいすなどを見ると、「ぺ」よりも現代風な印象をうけた。しかし、キッチンの向かいにあっ て寝室となる和室には畳が敷いてあり、懐かしいような落ち着いた雰囲気があった。また、床にはいくつか段差がある。それは上に身分の高い者、下に行くにつ れて身分の低いものが居るというように、身分の違いを表すための上段・下段であったようだ。そういった古くからの構造を残していることも温もりを感じる要因だと思った。
 「ぺ」と難波邸はどちらも内装を改修しているが、古民家の構造体をよく残しており、木造古民家の温もりを感じることができる。そして、雰囲気としての温かさはあるが、機能的な暖かさが課題となっているため、床暖房などの設備が必要である。そのためには、相応の費用が必要となるが、断熱設備が整えば過ごしやすくなり、今よりもさらに魅力のある建物になりそうだと感じた。



土蔵サウナやジビエは観光資源としては有効だが、移住を誘引できるか

 《問2回答》  中右手の久米屋は大正3年の古民家を利用した宿泊施設であり、2018年に営業を開始した。内装は囲炉裏部分のみ改修している。久米屋付属の土蔵サウナは地域活性化のため地域住民とともに造られた。土蔵のため保温性が高く、一度火を焚くと2~3日温かいままである。蓄熱方式をとっており比較的低温のため、長時間はいることができ、コミュニケーションの場としての役割も果たす。このサウナを目的として、人口30人ほどの中右手集落に年間300人が訪れる。建築家の丸山さんは、サウナを目的に訪れた人々が右手を知り、移住を考えてもらうことで限界集落の右手を救うことに、期待を持っている。
 久米屋はカールベンクスの古民家再生と同様に、古民家の元の柱や梁を残しており、天井を見るとその骨組がむき出しになっている。また、カールベンクスは古民家の良さを活かしつつ、洋の要素や遊び心を取り入れ、和洋と新古を織り交ぜているが、久米屋でもソファなど洋の要素がある。しかし、カールベンクスの建築の方がより和と洋が自然に調和している印象があり、久米屋はさらに洋が和の要素が濃いような印象を受けた。 もしもどちらかが自分の住居になるとすれば、カールベンクスの建築では、ゆったりと充実した楽しい生活を送ることができそうであり、久米屋ではのんびりゴロゴロしながら過ごしたいような気がした。いずれにしても古民家の温もりがあり、穏やかな心地で生活ができそうだと感じた。一方、機能性に関していえば、カールベンクスの建築が優れている。特に断熱性においては、 床暖房や壁の断熱材、薪ストーブなどが整備されているカールベンクスの再生古民家は圧倒的に優れている。久米屋には石油ストーブと炬燵、囲炉裏があったが、終始ジャンパーの着用が必要であった。
 次に、地域との係り。カールべンクスは地域住民が集まる場を提供し、自らも積極的に参加して住民とのコミュニケーションを大切にしている。右手の土蔵サウナもその特性を生かして、住民や訪れた人々のコミュニケーションの場となっている。昔と比べて現代では、地域の行事や住民同士の助け合いなどが減少し、地域住民同士の関係が薄れているように感じる。そういった中でコミュニケーションの場と しての土蔵の存在は貴重なものであると思う。そして、コミュニケーションの場は地域を活性化させるということにおいても大切なことであると感じる。
 丸山さんは移住者を増やすため、久米屋を訪れた人々に右手を知ってもらえたらと期待しており、土蔵サウナで人を呼ぶことに積極的である。 一方、カールさんは集落が観光地になることについては否定的である。移住者を迎える施設を充実させるが、観光地にはしない、というスタンスである。たしかに地域が観光地化して落ち着きを失ってしまうのは、避けるべきことのように思う。しかし、土蔵サウナやジビエ料理をは有力な観光資源ではあるけれども、はたして移住者を多く引き寄せることができるであろうか。また、カールさんは全国的にも知名度のある建築家なので、その古民家再生作品にあこがれて移住者は集まりやすいであろうし、VTRの映像を見るとすでに集落は活気づいているように感じた。今の時点では右手の状況はそうではないため、まずは右手に人を呼んで知ってもらうのは、大切なことだと思った。


1220大原20売物件01 1220大原20売物件02 外側は美しいのに・・・


落着きを求めるなら道草、コミュニケーションなら街道

 《問3回答》 大原宿は「みちくさの駅」と比べて関西へのアクセスが良く、教授が奈良と往来するには便利である。また、病院や理髪店、駅、スーパーなどが徒歩圏内にあるので、生活しやすいう。また、比較的安価で購入できる古民家(売物件)があるということも魅力的だ。問題は、住宅が軒を連ねており、近隣住民とのコミュ ニケーションの機会が多くなりそうな点が気になる。人との距離が近いと、気遣いも増える。その点でいえば、「みちくさの駅」はポツンと一軒家であるため、近隣にそれほど気を遣う必要もない。薪ストーブをがんがん焚いても、大音量の音楽やテレビでも好きなことができる。落ち着いて執筆活動に集中できるだろう。右手の集落も大原宿と比べると落ち着いて過ごすことができそうだ。智頭の冬は厳しいが、断熱設備をしっかり工夫するか、冬の間は奈良に籠ってしまえば、それほど問題ではないと思う。
 大原宿はコミュニケーションが多そうだといったが、これは魅力でもある。コ ミュニケーションの場を設けるということは、仕事を引退した私の祖母も気を使っているが、新しくコミュニケーションの場を作ることは大変だと感じるし、人と会話をする場はだんだん少なくなっていく。大原宿であれば、毎日だれかと顔を合わせることになると思われるため、自然とコミュニ ケーションが生まれるのではと思う。
 以上のことから、落ち着いた生活を求めるのであれば「みちくさの駅」や右手が良いが、コミュニケーションが自然と生まれそうだという面で大原宿も魅力的であると思う。


《連載情報》雪国の再生古民家をたずねて
(1)十日町市松代 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2753.html
(2)十日町市竹所 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2754.html
(3)智頭町板井原 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2755.html
(4)美作市大原・右手 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2756.html
(5)美作市大原・右手〈学生課題〉 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2757.html

《関係サイト》
買い物に悩むバースデー(大原・右手の学生課題〈2〉含む)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2758.html
美作の久米屋を訊ねて
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2730.html
さよなら、みちくさの駅
(1)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2717.html
(4)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2746.html
(5)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2747.html
(6)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2748.html

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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