fc2ブログ

東鯷人cafe(第1回)満員御礼

0223東鯷人04武内02 0223東鯷人08会場02資料01


かつて「東鯷人」を読んだ学生と会場設営

 2月23日(金/祝)の東鯷人cafe(第1回)を控え、21日から準備を始めました。発表者は準備に忙しく、わたしと家内に加えて小錦くんの三人だけの準備を翌22日まで続けたのです。小錦くんは2019年後期のプロジェクト研究「漫画と文献で読む魏志倭人伝」に参加した経営学部の学生です(当時2年次)。1回めの記録を調べてみると、彼は「後漢書倭伝・宋書倭国伝」現代語訳の6回目を担当しています。『後漢書』倭伝は『漢書』地理志を引用しているので、東鯷人も出てきたはずですが、わたしに記憶がないので、彼が覚えているはずもないでしょう。非常に朗らかな学生で、3年次以降も学内ですれ違うとにこやかに挨拶してくれるし、なにより帰宅時に立ち寄るセブンイレブンでバイトしていて、買い物すると非常に丁寧な対応をしてくれるので助かりました。
 彼は、昨年度末、就職が内定してから悩んでいました。本当に行きたい職場ではなかったからです。で、鳥取にもう1年いたいけど、先生はどう思われるか、と真顔で訊ねられたので、「男はそんなに早く社会に出る必要はない、自分の人生だからやりたいようにやればいい」と答えたら、彼は本当にそうしてしまって、1年浪人のあげく、本命の会社から内定を勝ち取ったのです。指導教員は卒業と同時の就職を薦めたそうですが、彼は1年残って、いまは悔いがない。良かった。


0223東鯷人08会場03聴衆02菓子席 0223東鯷人08会場03聴衆01
左端が小錦君。その左側にコーヒー横町がみえる


コーヒー横町

 セブンを皮切りに、マルイとダイソーで茶菓など買い揃え、会場の環境大学まちなかキャンパスへ。駅前の便利なところにあるにも拘わらず稼働率は低いそうで、今回のフォーラムでの活用をスタッフは喜んでくれました。正直なところ、私個人は全く使わない施設なのですが、今回のフォーラム定員25名にはうってつけの規模と判断しました。おまけに、設備は最新。電子ホワイトボードに、天井のプロジェクターから直接画像を映し出せる。その画面に電子チョークで書き込みもできます。若葉台キャンパスの講義室よりも新しい設備に準備段階から興奮仕切り。なんども電子チョークで落書きしました。また、飲料が充実しています。とりわけエスプレッソ・マシーンがすばらしく、何杯でも美味しい珈琲をおかわりできる。湯沸かしポットも大きく、紅茶のTパックが横に置いてあります。わたしたち準備班は、この給水区画を「コーヒー横町」と名付け、手描きの案内書を何枚か貼りました。
 当日は12時過ぎに発表者等は集合。予約客以外の聴講者も続々あらわれ、会場は25名満席となりました。万歳!


0223東鯷人01政田04 0223東鯷人01政田02up


講演雑感

 午後1時、定刻どおり、講演会を開始。一人20~30分の講演なので、のんびり喋れないが、さほど進行の遅れはなかった。

1.政田 孝「麒麟の源流 序説」
 発表者は市内で税理士事務所を営み、本学経営学部の非常勤講師を務める。昨年8月よりASLAB所属の研究生となった。研究主題は「麒麟・麒麟獅子・獅子舞」。昨年12月14日の「みちくさの駅」送別会で招聘した駒井氏の講演「「鳥取県の石造物-獅子と狛犬」は政田氏の研究に資すると考えて実現したものである。今回は前半で中国考古学・古代史から麒麟の起源説をまとめ、後半で日本の狛犬・獅子の問題に触れたが、前半と後半をつなぐのは大変難しいと感じた。将来的には、西欧のユニコーンと東アジアの麒麟に系譜関係があることを証明したいようだが、途方もない資料が必要であり、いまのペースで研究を進めるなら、論文としての完成はわたしが鳥取を去って後のことになるであろう。


0223東鯷人02尾前01up 0223東鯷人02尾前02


2.尾前 輝幸「真実性と快適性からみた古民家再生の動向-鳥取と北陸の寒冷過疎地から」
 ポスターセッションで人気を集めた卒論を発表してもらった。いちばんの元ネタは浅川の上海l講演だが、自ら美山・丹波篠山・今井町・奈良町・若桜・板井原・竹所(カールベンクス)・ブータンなどを訪れて事例数を増やすと同時に、雪国のセカンドハウス問題について、昨年度の河原町T家再生計画、みちくさの駅、大原古町の例などから問題点を指摘した。現状の補助金制度(移住・撤去・リフォーム)では全然経費が足りないのである。ふつう学生はパワポに忍ばせた科白を棒読みする傾向にあるが、レーザポインタを使ったフリートーク気味の部分もあり、好感をもたれたようだ。本人に訊いたところ、横町のコーヒーメーカー騒音に負けないように、大声を出したことでリラックスできたという。「カールベンクスの作品はお金持ちが買うのか」という質問があったけれども、誤解があるようなので、ここに説明しておく。ただのお金持ちがカールさんの再生古民家を買っているのではなく、都会での仕事をリタイアした高齢者が自分の最後の住処としてカールさんの民家を買い、限界集落での晩年の生活を決意した、ということである。かくいう私も、もし近隣にカールさんの設計による売物件があったら、買いたいところだが、新潟方面まで移住するのは流石にしんどい。結局、奈良に戻るしかないという現実がある。


0223東鯷人03東up 0223東鯷人03東02


3.東 将平「仏教に潜む非仏教/前仏教の諸相-ブータンの秘境から
 なお修論に苦しんでおり(締切は2月29日)、相当疲れているのか、やや顔色が冴えなかった(風邪の初期症状だったらしい)。ブータンにおける前仏教/非仏教系神霊の属性と祭場に関する考察など、どこかでだれかがやっているとは到底思えない研究であり、オリジナリティもレベルも高いのだから、もう少し余裕をもって、やや科白からはみ出してもよいので、聴衆に訴える工夫がほしかった。それでも、16日の修論公聴会から明らかに前進していることが分かった。あと一歩で修論はできあがるので完全燃焼してほしい。


0223東鯷人07記念撮影02 0223東鯷人07記念撮影01


0223東鯷人04武内01up 0223東鯷人04武内01up02


4.武内あや菜「菅原遺跡円堂復元の批評-行基を供養する十六角形の建物」 
 よくこの主題に取り組んでくれたと思う。大変粘り強く、教師のやっかいな指示をクリアし続け、高い位置にたどり着いた。すばらしい論文ではあるけれども、行基・菅原遺跡は鳥取とは関係ないので、聴衆の大半にはピンと来なかったかもしれない。繰り返すが、指導教員の評価はとても高いものである。今年度の卒論・修論の最優秀賞だと私個人は独断で思っている。発表も流ちょうで、良かった。紅一点の役割をよく果たしてくれた。


0223東鯷人05岡垣04 0223東鯷人05岡垣02


5.岡垣 頼和「鳥取城の復元-中ノ御門表門と渡櫓門」
 いまや鳥取市教委になくてはならない存在となった研究室OBの発表である。わたし個人は復元事業にあまり係わりたくなくて、ピーター・クックのように「アンビルド・アーキテクト」でよいのだけれども、発表者はバリバリの建築好きで鳥取城の中ノ御門表門と渡櫓門を精魂込めて復元してきた。尊敬に値する業績であり、この事業を進める上で発表者がいなかったら、県市ともに苦境に陥っていたであろう。そういう人物に対して苦言を呈するような発言は控えるべきとは思いつつ、やはり私は歴史遺産保全論などの講義で強調してきたように、大切な点は「何が訪問者を感動させるか」という点に尽きると思っている。会場でも指摘したが、残念なことに、人を感動させるのは精密な復元建物ではなく、復元建物を含まない遺跡の景観であり、その代表として沖縄のグスク群を例示した。講義では、毛越寺庭園や一乗谷庭園も同類の例として賞賛している。文化庁や県市文化財課は、復元することを目的化しているが、遺跡調査の目的は「復元」ではない、ということに早く気づいてほしい。だとしても、発表者の労苦には心より敬意を表したい。


0223東鯷人06浅川03 0223東鯷人06浅川02up


6.浅川 滋男「東鯷人と建築考古学」
 琵琶湖博の小フォーラム「水辺環境と魚食文化」(2023年7月7日)で使ったパワポを、ほぼそのまま転用した。その点、とくに喋る必要もなかったかもしれないが、環謝祭(大学祭)の二日で「ナマズの天丼」弁当を90箱売った件や、全国税理士共栄会文化財団研究助成に「ナマズ食の文化史的再評価と郷土料理としての復興」が採択された件を追加でお知らせした。後者は「古代西日本のナマズ食文化の復元的考察を郷土食グルメの創作につなげる」ことを目的としている。申請段階において古代食とは「燻製」をさしていたが、昨年の近江八幡料亭における「鮒ズシ」の食体験から今は「発酵」も併行して取り組みたいと考えている。つまりナマズのナレズシが可能かどうか、なのであるが、以下のような情報をえている。
  ①室町時代の貴族・天皇の食事を担当している(御厨子所別当)山科家の日記にナマズは15ヶ所確認でき、そのうち2件はスシに関わる。中世貴族がナマズのスシを食していたことは間違いない。
  ②栗東市大橋三輪神社の大祭ではドジョウとナマズのスシが供えられる。三輪神社のドジョウズシ造りは秋分の日に行われる。今年は9月22日(日)
  ③大津市石山に「至誠庵」というフナズシの店があり、現在、ウナギと近江牛のナレズシに挑戦中。
 最後の一年、どのような展開が待ち受けているか、自然体で臨みたい。

 以上で講演会は幕を閉じた。驚いたのは、楕円テーブルにおいた菓子類が消滅していたことである。小錦君と一緒にあれだけ買い込んだものが食べ尽くされていた。食べたのはジュニアたちである。そりゃ仕方ないだろう。大人の話を聞いてもつまらないから、お菓子に集中するわね。それでおとなしくしてくれたのだから、結構ですよ。しっかり歯磨きしてください。


0223東鯷人08会場01お菓子01 0223東鯷人08会場01お菓子02消えた
(左)before  (右)after


《連載情報》東鯷人cafe(第1回)
予報1 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2786.html   
予報2 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2788.html
予報3 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2794.html 
満員御礼 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2796.html

《2023年度卒論・修論概要》
1.寒冷過疎地の古民家再生と移住の諸課題 -真実性と快適性の両立へむけて(尾前輝幸卒論)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2791.html
2.大僧正行基の長岡院に関する継続的再検討 -奈良市菅原遺跡の発掘調査報告書の刊行をうけて(武内あや菜卒論) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2789.html
3.ブータンにおけるボン教/非仏教系の遺産-クブン寺とベンジ村を中心に(東将平修論)
前編 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2798.html
後編 http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2799.html

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
--
魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カレンダー
04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR