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聖神社の建築年代(Ⅱ)

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 8月はゼミの3年生全員が3つの受け入れ先に分かれインターンシップをしました。先生からそのレポートを書くよう再三言われていたのですが、今日までのびのびになってしまったことをお詫びします。わたしは実習先の一つであった県指定文化財「聖神社」でおこなった放射性炭素年代測定部材サンプル採取について報告します。
 鳥取市行徳町の聖神社は、宝永7年(1710)の棟札を残していますが、建築様式は19世紀前中期を示していることをすでに先生が述べておられます。『鳥取県の近世社寺建築』等によると、本殿の建築年代については『鳥府志』に以下のような記載があり、寛政年間(1789-1801)と推定されています(参照)。

  本社 
  寛政年間、更に建たり。但、その発端は旧しきこと成しと聞えける。国中無双の麗営なり。
  工匠巧を究め、彫刻美を尽せり。世説に、当社は出雲の日ノ岬の社を模規すと云。

 一方、拝殿・弊殿は「後年拝殿を営み神籬を繞し」とあり、文化十年(1813)の棟札を残しています。お盆前には本殿の妻飾や破風板の絵様を拓本にとりましたが、先生の見解が「文化文政以後」でした。今回はまず拝殿の向拝周辺で絵様の拓本をとりました。再び先生の見解によると、本殿妻飾の虹梁と拝殿向拝虹梁の絵様が比較的古式であり、本殿の破風板はそれよりも明らかに新しく幕末に下る可能性があると仰います。


聖神社 本殿妻飾虹梁 ←本殿妻飾虹梁絵様


 このように錯綜した年代資料を科学的年代測定からも考察しようということで、8月8日にまず年代を測定する本殿・拝殿のはね木(差し替え材)の実測をおこない、円形断面のサンプル材を裁断してもらいました。はね木は当初材である可能性が高く、おまけに樹皮直下の年輪を残しています。材種はマツ属ということで、年輪年代測定をおこなうことはできません。放射性炭素年代を適用するしかないわけですが、拝殿のはね木は年輪50年以上を数えるので、ウィグルマッチ法に適しています。
 盆休みの後、作業を再開しました。8月22日には他のゼミ生の応援もあり、本殿と拝殿の裁断はね木材からウィグルマッチのためのサンプルを各3ヶ所採取しました。まず、サンプルに新品のカッターで線を入れ、その上にマチ針を5年ごとに刺していきます。結果、拝殿はね木の年輪数は全65年、本殿のそれは全20年であることが判明しました。少なくとも40年の年輪を必要とするウィグルマッチにとって後者は条件のよい材ではありませんが、今回は練習ということで二つの円盤状の材の小口からサンプルを採取しました。サンプル採取の位置は、年輪の両端部と中間の3ヶ所でして、チップは年輪1~2年分を削り取ります。米粒状の大きさで十分です。今回が初めての作業だった私たちは、年輪の硬さと格闘しながらも、なんとかサンプルを得ることができました。
 米粒状のサンプルはまずアルミ箔でくるみ、ジッパー付きのビニール袋に納め冷蔵庫で保管します。これから先は業者さんにサンプルを送って結果待ちです。なにぶん測定代金が高いので(チップ1点につき数万円)、採取したサンプルの中から厳選して業者さんに送付するものを選びます。今回の場合、65年輪と表皮直下の層を残すが拝殿はね木の方が有力な候補であるのは言うまでもありません。これで良い結果が出ればいいなと思っています。(ユーリー)

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↑ 拝殿はね木(差し替え材)の年輪サンプル
 

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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