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ドラフ巡礼(Ⅹ)-ブータンの洞穴僧院を往く

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インド人の村と日本人の棚田

 今回のブータン訪問は洞穴僧院の調査を主目的にしています。洞穴僧院は「崖(dra)」に立地しているので、調査前には必ず山登りが待ち構えています。それもまた修行の一つとは思うのですが、調査現場に辿り着いても、一息入れてからでないと体が動きません。おまけに、私はパロ空港着陸後、車酔をしなかった日がありません。とくにドチュラ峠のヘアピンカーブには悩まされました。わたしと白帯さんの2名は窓から顔をだして外気を吸い続けていました。

 9月14日。ドチュラ峠(標高:約3100m)経由でプナカ・ゾン(標高:約1200m)を訪問した後、ワンジェ(Wangdyhe)地区のチミラカン(Chimilhakhang)寺をめざしました。ラカンに至る前に広大な棚田がひろがっています。ここもまた西岡京治の指導のもとに生まれた棚田だそうです。近くにリチェンガン(Rinchengang)という村があります。100年ばかり前にインド人が入植し、そのままいついて今はブータン人として暮らしています(↑)。


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チミラカンでのデモンストレーション

 まもなく小さな町に到着し、バスを降りました。遠くの小高い丘の中央にがチミ・ラカンの境内(標高1360m)がみえます。ウータンさんはハイキングのコースとしてチミラカンを選んだようです。町から丘上のラカンまでは相当の距離があり、棚田を貫く畦道のハイクは快適でした。稲穂が波打つ畦道を歩いていると、まるで日本の農村にいるような錯覚を覚えます。途中、田んぼの中にブータン式ストゥーパがポツンポツンと点在しています。ブータンに来てからというもの、寺以外の街中や車道沿いなどろいろなところにストゥーパが寄進されているのをみてきました。ブータンは全土が聖域であり、まさに「仏国土」という表現がふさわしいと思いました。先生は先陣を切って歩いていきます。すでに夕方になっていて、調査のための時間が少なくなっていたからです。しかし、本心ではチミラカンを調査したかったわけではないようです。


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 境内の構成は単純です。中央に本堂ラカンがあり、参道側に大きな菩提樹が移植されています(↑)。その反対側には僧房ジムカンが軒を連ねています。チミラカンに洞穴僧院はありません。おそらく瞑想修行は本堂内の一室を利用しているのでしょう。崖がないチミ・ラカンは、ゾンドラカ、ダカルパ、チェリのような厳しく迫力ある景観はなく、どこかおだやかな雰囲気に包まれています。しかし、チミラカンでも測量器材を据えるよう指示がでました。それは本格的な調査というよりも、後発隊に先発隊の調査方法を示すデモンストレーションだったのです。先発隊はこれまでどおりの作業を黙々とこなしました。後発隊の1年生はそのサポートをします。ユートは、一年生2名と寺の廃材を切断て年代測定用のチップを採取しました。私は、 セツ、ユーリーと分担して屋根伏図を描きました。3人いれば文殊の知恵。手早くを配置図を描き上げることができました。インパルスを使う測量の方法を1年生はじっと見守っています。


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チョルテン古材の調査

 一方、本堂正面の平場では、ちょっとした騒動がおきていました。そこにブータン式チョルテンの古材があり、調査の許可を得るために一人の僧をお呼びしたところ、その僧は材の切断をあっさり許可され、鋸までもってきてくださったのです。材を切断することで木口面が鮮明にあらわれ、確実な年輪数をおさえることができます。ところが、鋸が小さすぎたため、切断の途中で動かなくなってしまいました。仕方がないので、ホゾを切り取ってみたのですが、不思議なことに、切断した新しい木口面の年輪は不鮮明で、周辺の風化した木口の方が年輪を顕著に読み取ることができたのです。結局、この面でいちばん外側の年輪のチップを採取したほか、ホゾは樹種鑑定のため持ち帰ることになりました。ブータンの建築部材はマツ属が多いのですが、ウータンさんは古材をカシだと言いました。これを科学的に裏付けたかったのです。


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 ここで評価をあげたのがワープ君です。米粒大のチップをアルミホイルにくるんで納めるジッパー付きの小さなビニール袋はいくつも用意していましたが、ホゾを納めるほど大きなビニール袋は持ち合わせていません。ところが、ワープ君は「あるよ」の一言の後、本堂の裏手にまわってまもなく戻ってきまして、手に大きなジッパー付きビニール袋をもっているではありませんか。「なんでもってんの」と訊ねると、「山での調査には役に立つからもっていけと先輩にアドバイスされた」との返答に一同感嘆。こうしてかれは英語の通訳に続いて評価をアップし、ついにはMVPを受賞することになるのです。ただし、ビニール袋については不審にみる向きもあり、日本にワープして帰国し、百均でビニール袋を買ってきたのではないか、という説まで浮上する始末。いずれにしても、なかなか侮れない後輩ですね。


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↑チョルテンの古材 ↓古材の納まっていた場所
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 じつは測量中からずっと気になっていた物体があります。境内のいちばん隅に置かれた謎の白い構造物で、建設中か修復中のチョルテンか何かかと思い、ガイドのウータンさんに「あれは何ですか?」と訊ねると、「バングラデシュ式のストゥーパです」と言われます。イスラム教国にストゥーパがあるはずもなく、もちろんそれは冗談です。よくよく聞くと、牛の糞をメタンガスに変える大きなコンポストでした(↓)。最近に導入されたバイオマスの装置だということです。
 当初は先発隊4人+N教授で進めていた調査です。後発隊の合流で人数が増えすぎてどうなるか、上手くまとまり作業分担できるのかと思っていました。しかし、やはり「数は力」ですね。人数が増えたことで、一人が抱える荷物の量がって負担が少なくなりました。作業も短時間で多くのデータを得ることができます。人数が多いと安心感があり、頼もしいです。帰りのバスの揺れに酔いながら、そういうことを考えていました。(ケント)


0914 バイオマス装置
↑後ろにみえるのがバングラ・チョルテン??

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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